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令和3年4月
国際感染症学院長
堀内 基広

 

ご挨拶

 

 近年、エボラウイルス病、ジカウイルス感染症やパンデミックインフルエンザ等の新興・再興感染症が世界各地で発生し、人類の脅威となっており、さらに国内ではマダニ媒介性ウイルス感染症(SFTS)の発生が最近の大きな社会問題となっています。これらはすべて、自然界の野生動物から、家畜や家禽そしてヒトに侵入・伝播して悪性感染症を引き起こす人獣共通感染症病原体に起因しています。また、食糧生産に重要な産業動物等においても、高病原性鳥インフルエンザや口蹄疫等、海外からの侵入と国内での感染拡大は甚大な経済的被害をもたらします。そして、これらの人獣共通感染症や越境性動物感染症の対策には国の枠組みを越えた対策が必要であり,国際的な協働が不可欠です。これらの感染症の克服には、病原体に関する基礎研究に加えて、自然界における生態や宿主の免疫応答に関する研究、診断、予防、及び治療薬に関する応用研究、さらには感染症の発生予測、リスク評価、管理、国際保健行政に関する幅広い知識と高度な専門性が求められており、このような感染症研究やその対策を指揮できる専門家養成の要望は国内外で一層高まっています。

 ヒトや社会の健康保持には、動物の健康や環境の保全を一つとして考える必要があるという「One Health」の概念が国際的広がりを見せています。多くの感染症の克服においても、この「One Health」の理念を推進して、学問・研究領域間の壁を越えた連携が必要です。この様な状況の下、北海道大学では、これまで、21世紀COEプログラムならびにグローバルCOEプログラムにより、人獣共通感染症国際共同研究教育拠点を構築し、博士課程教育リーディングプログラム「One Healthに貢献する獣医科学グローバルリーダー育成プログラム」では、国際舞台で活躍できる獣医科学専門家を育成するために、大学院教育を改変して、学際的な視野を養うためのスクーリングの強化や実践的な国際活動を取り入れた大学院教育を推進してきました。

 国際感染症学院では、以上のようなこれまでの取り組みを発展・強化させ、感染症学領域および獣医学領域における大学院教育のさらなる国際化・学際化を図ります。そのため国際感染症学院では、人獣共通感染症リサーチセンター、獣医学研究院、および医学研究院等の教員が参画することにより、それぞれの専門を活かした分野横断的な教育体制を構築し、世界30カ国以上の共同研究ネットワークを活用して、「感染症プロフェッショナル」の養成を目指して、社会的に問題となっている感染症の制御を主導できる人材を養成します。